民法なエブリディ 準委任

【登場人物】
山羊飼いのペーター
除雪プロのドライ
【物語】
雪深い冬のアルプス。
この時期、羊飼いのペーターは、もっぱらハンターの
案内役を業としている。
ペーター:ハンターが狩猟に入るから、ここら辺から
除雪してもらいたいんだ。
ドライ:お任せください。私たちは除雪のプロですから。
ついでに今なら冬のスタート割引キャンペーン中。
ペーター:うわぁ、そいつは、助かるなぁ。
それにしても、今年は雪が深くて、大変だよ。
ドライ:大丈夫。ドライなら、ラスト50日から逆転でき
ますから。
ペーター:除雪は50日じゃ、終わらないよ。
ドライ:そう固いこと言わずに。
やった分だけ結果が出ますから。
しかし、除雪をし始めて3日目。ドライが契約を解除する
と言ってきた。
ペーター:なんだって!?
この時期に解除されても困るんだよ。
ドライ:こんなに雪深いと割に合わないんですよ。
ペーター:そんなの理由になるもんか。
頼んだ俺にとって不利な時期なんだから、
解除するには、やむをえない事由が必要だろ
【問題】
(準)委任者は、いつでも解除することができるが、受任者が(準)委任者にとって不利な時期に解除するには、やむをえない事由がなければならない。(H16-28改題)
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【正解】 「×」
ペーター:えーと、正解が「×」ということは、受任者は、委任者にとって不利な時期に 解除するには、やむをえない事由がなくても、いいってこと!?
そんなのヒドイよ。
さくら:(準)委任契約の各当事者は、いつでも自由に 解除することができます(651条1項、656条)。
もともと(準)委任契約は当事者間の信頼関係を 基礎とした契約ですから、それが損なわれた場合には、契約を継続させない方がよい からです。
ペーター:俺は信頼を損なってなんかないよ!
ドライが、雪深くて割が合わないと云って きたんだよ。
さくら:解除の理由は、どうでもいいんですよ。
もっとも、当事者の一方が相手方に不利な時期に 解除するには、やむを得ない事由があったときを 除き、相手方に対して損害賠償をしなければ なりません(651条2項、656条)。
今から除雪業者を見つけるのも大変でしょうから、 ペーターさんには「不利な時期」でしょう?
ペーター:「不利な時期」も何も、このザマだよ!
こうなったら損害賠償請求だ!!
クララ:ペーター、その前に、ドライさんに「やむを 得ない事由」がないかどうか確かめてね。
ペーター:あれっ、自暴自棄だったクララが…。
クララ:ペーター、冬の頑張りは、きっと報われるわ!
【条文】
(委任の解除)
第651条 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
2 当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
(準委任)
第656条 この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
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