【登場人物】
山田泰助 故人・父(酪農家)
みな子 母
太郎 子A
二郎 子B
【物語】
酪農を営んでいる山田家。
父・泰助が急死し、北海道に酪農実習に行っていた長男・太郎は急遽、呼び戻された。
太郎:母さん・・・。
母:太郎・・・(絶句)。
いったいどうしたんだい。
その毛虫がぶら下がったような髪の毛は
太郎:あぁ、これ?
ドレッドっつうのよ。
いかしてるだろ。
二郎:いかしてるのも何も…。
これからは兄さんがウチの牧場をやるんだろ。
そんな頭をしてる場合かよ。
太郎:あのさぁ、その話は、なかったことにしてくれ
ないかなぁ。
俺、スノボに目覚めたんだよねぇ。
母:お前、何のために北海道に酪農実習に行かせたと
思ってるんだい?
太郎:これでも、平昌五輪の可能性もあるって言われてるんだぜ。
母:父さんは、お前に牧場を継がせるために、ウチの土地を全部あんたに相続させると遺言したんだよ。
二郎:そうだよ。
俺だって、兄さんが牧場を継ぐならと思って、父さんの遺言に反対しなかったんだ。
太郎:じゃあ、土地はお前が相続することにして、お前が牧場を継いだらいいじゃん。
そうそう、そうしようぜ。
母:あんた、父さんの遺言なのに、そんな勝手なことできるわけないだろ!
【問題】
「甲土地は子Aに相続させる」との遺言がある場合、共同相続人全員の合意があっても、甲土地を子Bが相続する旨の遺産分割協議をすることはできない。(H13-30)
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【正解】 「×」
母:「長男の太郎に相続させる」という遺言があっても、二郎に相続させることができるのですか。。。
さくら:特定の相続人に「相続させる」という遺言は、 原則として、その遺産を当該相続人に単独で相続させるという遺産分割方法の指定である と解されています(最判H3.4.19)。
でも、遺言執行者がいなかったんですよね。
二郎:遺言執行者…?
さくら:遺言に従って遺産などの処理を 行う者をいいます。
遺言で指定したり、あるいは利害関係人の請求 によって家庭裁判所で選任したりします。
母:遺言には遺言執行者のことは書いてなかったし、 私たちも特に何もしていないし。
さくら:遺言執行者がいなければ、共同相続人全員の 協議によって遺産分割方法の指定と異なる遺産分割をすることができますよ。
二郎:なんだか父さんの意思を無視するみたいで 気が引けるけど。。。
さくら:もともと相続人が相続放棄ができる以上、 遺産分割でも自由に放棄できるわけですし、相続人の意思が、被相続人の意思(遺言)よりも 優先しますので。
太郎:じゃ、土地は二郎に相続させるということで 決まりだな。
二郎:ちょっと待った!
兄さんがスノボーなら、俺はボブスレーで平昌五輪を 目指すことにしたから。
母:お前たちったら、揃いも揃って馬鹿なんだから。
本気で出たいなら、リュージュになさいっ!
【条文】
(遺産の分割の基準)
第906条 遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。
(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)
第908条 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。
(遺言の執行の妨害行為の禁止)
第1013条 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。