【登場人物】
意知悪よし子 成年被後見人
志賀内茶羅男 よし子の孫(成年後見人)
岩民介護施設
【物語】
意地悪ばあさんとして名を轟かせたよし子も90歳。
認知症も進んだことから、成年後見開始の審判が申し立てられ、その保護者として孫の茶羅男が成年後見人に選任された。
茶羅男:さぁて。
介護施設と入居契約を締結して、ばぁちゃんを施設に入れることができたし。
これで成年後見人としての俺の役目もだいたい終わったようなもんだな。
(ルルルル…)
茶羅男:はい。志賀内ですぅ。
岩民:成年後見人の茶羅男様ですね。
こちら岩民介護施設ですが、意知悪よし子様の退去手続をしていただきたいと思いまして。
茶羅男:え~っ、入居させたばかりですよ。
岩民:でも、他の入居者様にやたらと暴力を振るわれて。
文句を言われると、損害賠償しろと怒鳴りちらされますし。
もうお引きとりいただくしか…。
茶羅男:そういう人の面倒をみるのが、そちらの専門でしょうが。
岩民:とにかく、こちらではこれ以上、無理ですから。
成年後見人のあなたに退去手続をお願いしているんです。
茶羅男:それじゃさ。俺、ばぁちゃんに言って、成年後見人を辞めさせてもらうわ。
俺もさ、いろいろやることあるんだよねぇ。
岩民:………。
そんなの成年後見人を辞める理由になりませんよ。
茶羅男:えっ、そうなの!?
じゃあ、家庭裁判所に辞める許可をもらえばいいよね。うん、そうしよっと。
【問題】
成年後見人は、正当な事由があるときは、成年被後見人の許諾を得て、その任務を辞することができるが、正当な事由がないときでも、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。(H24-27)
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【正解】「×」
茶羅男:一旦、成年後見人になると、辞めさせてくれないってわけ?
せめてさ。正当な事由がある場合は、本人の許諾を得れば、辞めさせてもらってもいいと思わない
さくら:成年後見人の定義って知ってますよね。茶羅男:…精神上の障害により事理を弁識する能力を
欠く常況にある者で、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた者(7条)、…です。
さくら:そういう状態の方から承諾を得たところで、そもそも完全に有効な承諾とはならないでしょ。
茶羅男:確かに、そうとも言えるな。
でも、家庭裁判所から許可をもらっても辞められないってどういうことよ。
さくら:任務を辞するには、正当な事由があることと家庭裁判所の許可を得ることが必要です(844条)。
成年後見制度は、成年被後見人を保護するものであると同時に、公共的な制度でもありますから、
成年後見人の勝手な都合では辞められては困るんです。
茶羅男:あ~ぁ。
仕方ないや。ばぁちゃんの退去手続をするか。
岩民:…それが、よし子様がここの施設から動かないと部屋に篭城されておりまして。
どうもお気に召した方がお出来になったようで。。。
よし子:もっとええ男が来ないと、出てってやらん。
やっぱ、意地悪最高
【条文】
(成年後見人の選任)
第843条 家庭裁判所は、後見開始の審判をするときは、職権で、成年後見人を選任する。
2 成年後見人が欠けたときは、家庭裁判所は、成年被後見人若しくはその親族その他の利害関係人の請求により又は職権で、成年後見人を選任する。
3 成年後見人が選任されている場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項に規定する者若しくは成年後見人の請求により、又は職権で、更に成年後見人を選任することができる。
4 成年後見人を選任するには、成年被後見人の心身の状態並びに生活及び財産の状況、成年後見人となる者の職業及び経歴並びに成年被後見人との利害関係の有無(成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と成年被後見人との利害関係の有無)、成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。
(後見人の辞任)
第844条 後見人は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。