民法なエブリディ 未成年者

【登場人物】
石ノ原新太郎 太陽族
河村商会のおやじ ボート屋
【物語】
時は遡って昭和25年。
湘南海岸近くに住む石ノ原青年は、河村商会から 中古ヨットを購入した。

石ノ原:弟の裕太郎ばかりモテやがるんだよね。 でも、このヨットがあれば、俺もアイツに勝てるって もんだぜ。

河村商会:今度の夏は、俺のヨットに乗らないかって 誘うてみーちょ。 おなごが、どんどん乗せてぇ~って
ついてくるっちゅーもんよ。

石ノ原:はっ、はっ、はっ。 いい買い物をさせてもらったぜ。 これからも、よろしく

ところがその翌日。石ノ原は、売買契約を取り消すと 言ってきた。
石ノ原:俺さ、未成年者なんだけど、親の同意を得て いなかったんだよね。 親の同意を得ないでした契約は、取り消せる だろ(5条2項)。 中古ヨットに、「減税」とかペンキで書いて あるのもカッコ悪いしさ。

河村商会:昨日の今日で取り消しかい。

どうせまた、維新商事さんところから、もっと ええヨットがあるとか、言われたんじゃろうて。。。
仕方なく取消しを認める河村商会を尻目に、石ノ原は、 維新商事から中古ヨットを購入。 しかし、その石ノ原も、日が経つにつれてヨットの軋みが 気になってきて、そして、再び河村商会を訪ねると―。
石ノ原:いろいろ考えたんだけど。こっちのヨットも いいんだよね。 売買契約の取消しは、やっぱやめるわ。

河村商会:おみゃーさん、今更、何を言うかと思ったら。 取消しの取消しなんて、認められんちゅーて。

石ノ原:でも、取消しについて親の同意を得ていなかった から、未成年者の俺は、取り消せるはずだぜ

【問題】 未成年者が、法定代理人の同意を得ないでした売買契約を、法定代理人の同意を得ないで取り消した行為は、行為能力の制限を理由に取り消すことができる。(司S60-29)
【正解】「×」
河村商会:やっぱり取消しの取消しはできないって 俺の言ったとおりじゃ。 商売をやってるとよ。だいたいのところは 常識で判断できるっちゅーもんよ。

さくら:未成年者が、法定代理人の同意を得ないでした 契約は、未成年者自らが有効に取り消すことが できますからね(5条2項、120条)。
河村商会:そりゃ、そうだわな。 契約を取り消せば、元の状態に戻るだけでよ、 なーんも、未成年者に不利にならんもんな。 ちゅーことはだ。未成年者保護のために さらに取消しを認める必要もにゃーでな。
さくら:それに、取消しの取消しを認めると、法律関係が 不安定になりますしね。 したがって、法定代理人の同意を得ないで 未成年者が取り消した行為は、行為能力の 制限を理由に取り消すことができません。
河村商会:さぁて、一件落着。 男、河村。後ろは振返らず。未来に、未来に進むでよ。 まかしてちょー

【条文】
(未成年者の法律行為)
第5条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3 第1項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
(取消権者)
第120条 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。 2 詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
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