民法なエブリディ 詐欺

峯富士子 A
ルパン4世 B
次元小介 C
【物語】
次元:明けましておめでとう、ルパン。
ルパン:おっ、次元、今年もよろしく頼むぜ
さぁて、ぱ~っと酒でも飲むか。
次元:その前にさ。暮れに、俺がお前から買った絵。
シャガールだって言ってただろう。
あれ、真っ赤な偽物だったぜ。
ルパン:え~っ!
くっそ~ぉ。
次元:何、言ってるんだ。
そのセリフは、偽物を掴まされた俺のセリフだぜ。
ルパン:あれさ、富士子ちゃんに、今すぐに現金が
欲しいからって、頼まれて買ったヤツなんだよ。
さては、富士子のヤツ。俺を騙したな
次元:そして、俺も騙された、と。
ルパン:こうなったら、富士子との売買を取り消して、金を取り戻してやる
(ル、ルルルル…)
ルパン:富士子、俺、ルパンだけど。
富士子:はぁい。何か用?
ルパン:何か用って。
よくも俺に偽物の絵を掴ましてくれたな。
詐欺だということで、お前との売買を取り消すから、俺の金を返してもらおうじゃないか。
富士子:あら。確か、あなた、あの絵を次元に売ったとか言ってたじゃない?
ルパン:それがどうした。
富士子:他人に絵を売ったということは、その前提である私との売買を完全に有効だと認めも同然でしょ。
今更、私との売買を取り消すなんて、できないわ。
ルパン:そ、そんな、バナナか
おサル・パンチか
【問題】
BがAに騙されてAから絵画を購入し、これをCに転売した場合、その後になってBがAの詐欺に気がついたとしても、当該絵画を第三者に譲渡してしまった以上は、もはやBはAとの売買契約を取り消すことはできない。(H23-27)
【正解】「×」
【解説】
ルパン:やれやれ。
これで、富士子との売買契約を取り消せるな。
さくら:はい。
ルパンさんは、富士子さんの詐欺によって、絵画を購入するという意思表示をしたわけです。
したがって、詐欺を理由にその売買契約を取り消すことができます(96条1項)。
ルパン:富士子は、他人に絵を売った後は、取り消せないとか言ってたけど…。
さくら:おそらく、法定追認があったと誤解されていると思います。
ルパン:えーと。
さくら:はい。
取り消すことができる行為であっても、法は、追認をすることができる時以後に、取消しと矛盾する一定の事実があった場合には、追認したものとみなすとしています。
追認というのは、文字通り、追って認めるということで、以後、取り消すことができなくなります。
そして、取り消すことができる行為によって取得した権利の譲渡も、法定追認の一場合です(125条5号)。
ルパン:でも、俺が次元に絵を譲渡しても、法定追認が成立しないというのは…?
さくら:次元さんへの譲渡は、騙されたことに気づく前のことですから、「追認をすることができる時以後」(125条)に、権利を譲渡したわけではありません。
したがって、法定追認は成立しません。
ルパンさんは、詐欺を理由に富士子さんとの売買契約を取り消すことができます(97条1項)。
富士子:ルパン、私との売買を取り消してもいいけど、それは私に騙されたって認めるというわけね。
本物のルパン一世なら、偽物だと見抜いて、お金は女性へのプレゼントだって言うわよ。
ルパン:くっ、くっそぉぉぉ…。
【条文】
(詐欺又は強迫)
第96条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。
(追認の要件)
第124条 追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にしなければ、その効力を生じない。
2 成年被後見人は、行為能力者となった後にその行為を了知したときは、その了知をした後でなければ、追認をすることができない。
3 前2項の規定は、法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をする場合には、適用しない。
(法定追認)
第125条 前条の規定により追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。
一 全部又は一部の履行
二 履行の請求
三 更改
四 担保の供与
五 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡
六 強制執行
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