令和2年度記述式問題46について

何をどう書くべきか!?

問題46は、不動産の二重譲渡において、一方が背信的悪意者である場合に、その背信的悪意者から譲り受けた転得者が登記を完了すると、第一譲受人に対抗できるという判例(最判 平成8年10月29日)が素材です。

実は、なんと試験前日に、教材(過去問)の手直しをしていて、この判例を読んだところでした。しかも理由付けのところを全部。やっぱり最後の最後まで過去問は大事なんですよね(つくづく)。

問題形式としては、新しい形式で、[判例の解説]を読んで、その説明がどのような理由に基づくものかについて書くというものでした。

まさに暗記でなくて、きちんと理解しているかどうかを問う問題です。そしてさらにその理解を正確に表現できるかどうかも問われています。とてもよい問題だったと思います。

また、問題文を正確に読むことも求められています。判例は、転得者について判示したものなので、転得者が第一譲受人に対抗できる理由を書けばよいと、当初、うっかり早合点してしまいました(汗)。

ということで、解答を考えていきますが、各種予備校の解答例が案外分かれています。

まず問題文をみますと、①「背信的悪意者は」に続けて、②背信的悪意者の意義をふまえつつ記述しなさい、とありますから、ここは背信的悪意者の意義を書いておくべきだと思います。

「登記の欠缺を主張することが信義に反する者」ですね。

「信義則」に反すると書かなくてよいので、「則」の1文字分は書かなくて済む、ふ~って感じです。

ちなみに「登記の欠缺を主張する正当な利益がない」だけですと、これは177条の「第三者」の意義を踏まえたにとどまり、問題文から離れます。問題文に「背信的悪意者の意義を踏まえつつ」とある以上、「信義に反する」あるいは「信義則違反」という文言は入れる必要があるでしょう。

次にC(背信的悪意者)が無権利者でない理由を検討します。

ちなみに判例は、”転得者”が不動産を取得できる理由として、次の2つを挙げています。

(1)背信的悪意者がした売買は無効でななく、したがって転得者は無権利者から不動産を買い受けたことにならない。

(2)背信的悪意者が信義則により177条の「第三者」から排除される法理は、その者と第一譲受人(B)との間で相対的に判断される。

設問では、第二譲受人である背信的悪意者Cが無権利者でない理由、つまり権利を取得した理由を聞いていますから、上記の(1)がポイントになります。

つまり、第二譲受人が背信的悪意者だからといって、第一譲受人との売買が無効になるものではないというところです。

答えとしては、先ほどの背信的悪意者の意義に続けて、「Aとの売買は無効ではなく、権利を承継取得しているから」としました。

ここの部分については「Aとの売買は無効ではないから」だけで終わらせない方がよいと思います。

なぜなら、たとえば他人物売買の場合、売買が有効であっても、権利を取得できるとは限らないからです。

売買はあくまでも債権契約。売買によって買主が所有権を取得できるのは、売主が所有権を有するからにほかなりません。

(さらにいえば、売主が不動産を所有者であり、その売買の意思表示には、所有権を移転するという意思表示(176条)も含まれているからです。)

ということで、背信的悪意者Cは、第一譲受人Aから売買によって権利を取得したことを示すために、売買によって「権利を承継取得している」ということを加えました。

承継取得か原始取得かを問う問題ではないので、「売買は無効ではないので権利を取得するから」でもよいと思います。

もっとも、実際には、背信的悪意者の意義を書いて、Aとの「売買は無効ではないから」まで書けていれば、満点とするのかなぁという気もしなくもありません。ここは解答例の発表を待つしかないところです。

最後に、一応上記の(2)についても触れておきますと、上記(2)は、背信的悪意者の背信性(信義則違反)は相対的に判断されるということを述べたもので、背信的悪意者Cが「無権利でない理由」ではありません。したがって、この点については触れなくてよいということになります。