令和元年度問題28について

問題28について、行政書士試験研究センターより試験問題に誤りがあるとして、全員正解の扱いになるとの発表がありました。
妥当でない肢として、肢3のほか、肢4も、判例に鑑み妥当でないもの(正答)として取り扱うことが適当と考えられるというのがその理由です。

肢4は「代理人が本人の許諾を得て復代理人を選任した場合において、復代理人が代理行為の履行として相手方から目的物を受領したときは、同人はこれを代理人に対してではなく、本人に対して引き渡す義務を負う。」というものです。

試験委員が根拠とした判例は、最判昭和51年4月9日だと思われます。

同判例は、民法107条2項に基づいて本人復代理人間に直接の権利義務が生じた場合であっても、本人又は復代理人がそれぞれ代理人と締結した委任契約に基づいて有している権利義務に消長をきたすべき理由はないとして、復代理人が委任事務を処理するに当たり金銭等を受領したときは、復代理人は、特別の事情がないかぎり、本人に対して受領物を引渡す義務を負うほか、代理人に対してもこれを引渡す義務を負うとしました。

肢4は、復代理人が相手方から受領した物について、代理人に対する引渡し義務を否定しているので、妥当でないものだと判断したと思われます。

ここでやりがちなのは、肢4が妥当でないとなったときに、条文を見ないで、復代理人は、本人に対して受領物を引き渡す義務を負うほか、代理人に対してもこれを引き渡す義務を負うと覚えることです。

上記の判例では、本人と代理人との間に委任契約が、代理人と復代理人との間に復委任契約が締結されていました。

この場合、代理人は、委任契約に基づき、その事務を処理するにあって受領した物を本人に対し引き渡す義務を負います(民法646条)。

そして、復代理人は、107条2項により「本人及び第三者に対して、代理人と同一の権利を有し、義務を負う」ことから、その受領した物を本人に対して引き渡す義務を負います。
では、復代理人の代理人に対する受領物の引渡し義務の根拠は何かというと、復委任契約であり、条文の根拠は民法646条ということになります。

つまり、復代理人は、復代理関係に基づいて、受領した目的物を代理人に対して引き渡す義務を負うわけではありません

そして、もっと言えば、代理権は、委任契約を原因として付与される場合が多いのですが、必ず委任契約によるわけではありません。請負であったり、雇用を原因関係として代理権あるいは復代理権が付与されることもあります。

確かに肢4が、復代理人の目的物の引渡しについて「代理人に対してではなく」ときっぱり否定したことはあまりよくないのですが、だからといって、復委任契約と関係なく、復代理人が代理人に対して目的物の引渡し義務を負うとするのが適切かというと、そこはまた別だということになります。

試験研究センターの「・・・判例に鑑み正答として取り扱うことが適当と考えられる」いう微妙な言い回し(正答であると断言していない)に、このことが表れているような感じがします。

 

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