令和元年度問題36について

問題36は、商行為の代理人が本人のためにすることを示さなかった場合に、相手方が、代理人が過失なく、本人のためにすることを知らなかったときの法律関係について、妥当なものを選ぶ問題でした。

まず商行為の代理の条文を見てみましょう。

(商行為の代理)
第504条 商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずる。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない。

そして、判例は、504条ただし書きの趣旨について、「本人と相手方との間には、すでに同条本文の規定によって、代理に基づく法律関係が生じているのであるが、相手方において、代理人が本人のためにすることを知らなかったとき(過失により知らなかつたときを除く)は、・・・相手方と代理人との間にも右と同一の法律関係が生ずるものとし、相手方は、その選択に従い、本人との法律関係を否定し、代理人との法律関係を主張することを許容した」ものだとしました(最大判昭和43年4月24日)。

したがって、肢5の「相手方は、その選択により、本人との法律関係または代理人との法律関係のいずれかを主張することができる。」が正解になります。

しかし、よくよく見ていくと肢3も不正解だと言いきれないのではないかー。そういう疑問を感じなくもない。これが問題36を取り上げた理由です。

肢3を見ますと、「相手方と本人との間に法律関係が生じるが、相手方は代理人に対しても、履行の請求に限り、これをすることができる。」とあります。

試験委員からすると、判例は、「代理人との法律関係」を主張することができると判示していることから、肢3については「履行の請求に限り」することができるとすることで、妥当でない肢にしたように想像します。

しかし、上記の判例は、504条ただし書きの趣旨を示したものであり、当然、504条を前提としています。

そこで504条を見てみますと、本文は、代理人の顕名がない場合でも、本人に対して代理人のした行為の効果が生ずることを規定しています。つまり、相手方と本人との間に法律関係が生じる、ということです。

そして、相手方が本人のためにすることを知らなかったときは、「代理人に対して履行の請求をすることを妨げない」としています。この書きぶりからすると、本人との間に法律関係が生じることを前提に、相手方が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人にも履行の請求をすることができると読むのが素直です。

では、相手方は、代理人に対し、これ以上に何か請求できるのかというと、特に定めはありません。
相手方が代理人=本人だと考えて契約したことに対し、相手方は、取消しや解除ができるわけではありません。

そうすると、商法の規定としては、「相手方と本人との間に法律関係が生じる」が、相手方において、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、「代理人に対しても、履行の請求に限り、これをすることができる」としているとしたところで、別に間違いだとは言い切れないように思えてきます。

また、判例は、504条ただし書きの「代理人に対して履行の請求を妨げない」の解釈として、代理人に対する法律関係(=本人との代理に基づく法律関係と同一のもの)を選択的に主張できる趣旨だと判示したことも見過ごせません。

つまり、判例によれば、504条ただし書きにいう「履行の請求」は、「代理人との法律関係(=本人との代理に基づく法律関係と同一の法律関係)」という趣旨だということになります。
しかも判例は、「代理人との法律関係」の内容として、具体的な法的効果を示したわけでもありません。

そうすると、肢3が妥当でないとすると、その根拠は、単に「履行の請求に限り」と「代理人との法律関係」とは字面が異なるという点に求めるしかなくなってきてしまいます(それでよいのかというと、はなはだ疑問だというのは、前記のとおり)。

このように考えていくと、肢3において、「履行の請求に限り」と限定したところで、妥当でない肢だとどこまで言い切れるのかどうか、よくわからないというのが正直なところです。

行政書士の質を上げるためにも、試験問題がより良いものになっていって欲しいと思います。

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