令和元年度問題26について

令和元年問題26について、youtubeに没問ではないかというコメントをいただき、改めて検討しました。

ちなみに本試験の現場では、アが妥当でない肢、イが妥当でない肢、ウが妥当な肢と順に解いたので、エは妥当な肢であろうと流し読みで判断し、問題26の正解を5にしていました。

問題は、その肢のエで、結論からいえば、妥当でない肢とするしかないだろうなと考えています。

肢エの素材は有名な富山大学事件(最判昭和52.3.15)。問題文をみると、「国公立大学が専攻科修了の認定をしないことは、一般市民としての学生が国公立大学の利用を拒否することにほかならず、一般市民として有する公の施設を利用する権利を侵害するものであるから、専攻科修了の認定、不認定に関する争いは司法審査の対象となる」とありました。

判例の原文が「国公立大学が専攻科修了の認定をしないことは、・・・学生・・大学の利用を拒否することにほかならず・・・」とあるのに対し、肢エは「・・・学生・・大学の利用を拒否することにほかならず・・・」となっています。

つまり、「の」と「が」の違いで、大学という施設利用を拒否する主体が「学生」になってしまっています。そうするとエは妥当でない肢と判断するしかありません。

想像ですが、試験委員は、妥当な肢にするつもりで、誤記を見過ごしたような気がします。。。

そこで、改めて他の肢を検討してみましょう。

肢アは、エホバ証人剣道実技拒否事件(最判平成8年3月8日)が素材。

問題文は、「公立高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分または退学処分を行うかどうかの判断は、校長の合理的な教育的裁量にゆだねられるべきものであり、裁判所がその処分の適否を審査するに当たっては、校長と同一の立場に立って当該処分をすべきであったかどうか等について判断し・・・」とあります。

判例は、校長と同一の立場に立って判断するのではなく、校長の処分が、裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用してされたと認められるかどうかで判断すべきとしていますから、妥当な肢ではありません。

肢イは中学校教員の転任処分の取消しが争われた最判昭和61年10月23日が素材。

問題文は、「公立中学校教員を同一市内の他の中学校に転任させる処分は、仮にそれが被処分者の法律上の地位に何ら不利益な変更を及ぼすものではないとしても、その名誉につき重大な損害が生じるおそれがある場合は、そのことを理由に当該処分の取消しを求める法律上の利益が認められる」。判例は、太字部分ようなことは言っていません。したがって肢イは、妥当な肢ではありません。

多少、ひっかかるとすれば、判例が、「他に特段の事情の認められない本件においては」法律上の利益がないとしたところだと思います。

しかし、判例は「名誉につき重大な損害が生じるおそれ」が「特段の事情」に当たるとは言っていないのですから、やはりイは妥当でない肢となります(しかも、名誉の侵害は、事実上の不利益にすぎないともしていますから、侵害が生じるおそれが特段の事情にあたらないのは、明らかです。)。

肢ウは、 国歌斉唱義務の不存在を争った 最判平成24年2月9日が素材。

問題文は、「公立学校の儀式的行事における教育公務員としての職務の遂行の在り方に関し校長が教職員に対して発した職務命令は、教職員個人の身分や勤務条件に係る権利義務に直接影響を及ぼすものではないから、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。」。この肢ウは妥当な肢です。

結局、妥当な肢がウしかないことになり、「妥当なものの組み合わせ」がないというのが本当のところだと思います。

没問にするかどうかは試験委員の判断ですが、個人的には没問にするしかないだろうなと思います。

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