民法なエブリディ 錯誤(H29-28)

【登場人物】

ユタカ自動車:中古車販売店

ユタカ信販

金梨勘治:町工場の社長

万時正子:町工場の従業員

なにかと資金繰りの厳しい町工場。
社長の金梨は、今日も資金を融通しようと西に東に奔走していた。

ユタカ自動車:そうやなぁ。こうなったら奥の手しかありまへんで。

金梨:奥の手でも、猫の手でもなんでもよろしいわ。
とにかく至急現金が欲しいんや。

ユタカ自動車:ほな、ウチとこの車をアンタに売ったことにして、ユタカ信販でローンを組みなはれ。
ローンには保証人をつけてもらわなアカンけど、あんたが月々返済すれば、保証人には迷惑かからん。どうや。

金梨:そりゃあ、願ってもない話や。
保証人には、従業員の万時正子に頼んでなってもらうわ。

こうして金梨はユタカ信販で空ローン(空クレジット契約)を組み、現金を手に入れた。
しかし、資金繰りに窮していた金梨が順調に返済できるわけもなく、保証人である万時正子は、ユタカ信販から返済を迫られた。

ユタカ信販:金梨さんが払えないんだから、保証人のアンタが払うしかないんだよね。

万時:・・・。
金梨社長とは連絡がとれなくなってしまって。。。

ユタカ信販:気の毒だけど、こっちは、そういうときのために保証人を付けているんだから。

万時:わかったわ。
でも、私が自動車ローンを払ったら、自動車は私がもらえるのよね。

ユタカ信販:まぁ、自動車が売買されていればね。

万時:えっ?
金梨社長からは自動車の立替払契約のローンだって聞いていたけど。

ユタカ信販:そうとも言うけど。自動車の売買は架空だから。

万時:まさか空クレジット契約ですか。
そんなもの返済しなくていいはずよ!

民法の規定及び判例によると、売買代金に関する立替金返還債務のための保証において、実際には売買契約が偽装されたものであったにもかかわらず、保証人がこれを知らずに保証契約を締結した場合、売買契約の成否は、原則として、立替金返還債務を主たる債務とする保証契約の重要な内容であるから、保証人の錯誤は要素の錯誤に当たる。(H29-28)

  ↓

【正解】○

ユタカ信販:車の売買は偽装ですけど、こっちは実際にクレジット契約に基づいて融資しているんですよ。
      そして、保証人は、クレジット契約に基づく立替金の返還債務を保証しているわけです。
      それなのに、なぜ売買の偽装が保証人の要素の錯誤になるのか・・・。さっぱりわかりません。

葛原:保証契約は、特定の主債務を保証する契約ですから、その主債務がどういうものかが、保証契約の重要な内容になります。
 ことに主債務が立替金の返還債務である場合は、商品の売買契約が前提になっていますから、その売買契約の成否が保証契約の重要な内容になります(最判平成14年7月11日)。

万時:そうよ。私だって空クレジットだと知っていたら、保証しなかったわ。

葛原:主たる債務が実体のあるクレジット契約か、金銭を融通するための空クレジットかでは、主債務者の信用も、保証人のリスクも全く違いますからね。

万時:今回の保証契約は、要素に錯誤があったということで無効だから、私は返済しなくて済んだわ。

ユタカ信販:あんた、社長が資金繰りに困ってたって、よう知ってたやろ。
空クレジットに気づかなかったことに、重大な過失があるんちゃうか!?

万時:金梨社長に融資したことこそ大きな間違い。
   それこそ重大な過失でしょ!

【条文】
(錯誤)
第95条 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

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