民法なエブリディ 養子縁組(H28ー35肢3)
【登場人物】
トメ:おばあさん
亀吉:トメの夫
卓也:化粧品のセールスマン
【物語】
卓也:奥様のようなお美しい方は、まだまだお手入れのしがいがございます。是非、当社のアフタリストで、肌の張りを蘇らせてください。
トメ:あら、そうぉ。
卓也:ええ、シワも伸びれば、腰も伸びます。
ご主人もきっと喜ばれますよ。
トメ:もう主人は、私のことなんて関心ないのよ。
家事使用人ぐらいに思ってるんだから。
卓也:そんなこのないでしょう。こんな素敵な貴方なのですから。
トメ:あらぁ・・・(ぽっ)。
卓也:そう。僕でよろしければ、いつでもお相手いたしますよ。
アフタリストシリーズを買っていただく度に、何度でも伺いますから。
こうして卓也は足しげくトメのもとに通い、トメの信頼を勝ち得ていった。
そしてある日のこと。
トメ:おじいさん、私、卓也さんを養子に迎えようと思うの。
亀吉:おっ、おい。突然、何を言うんじゃ!
トメ:彼は、私のことをとても大切にしてくれるのよ。
私が弱ったときには彼に面倒を看てもらおうと思って。
亀吉:お前、血迷うたのか。そんなの許さん!
トメ:あなたが反対しても無駄よ。
卓也さんも私も大人なんだから、二人が合意すれば養子縁組できるはずよ。
【問題】
C・Dが夫婦である場合に、Cが、成年者Eを自己のみの養子とするときには、Dが同意について意思を表示することができないときを除いて、Dの同意を得なければならない。(H28-35)
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【正解】○
トメ:えっ・・・。
養子縁組するのは、成人した卓也さんと私なのよ。それなのに、おじいさんの同意を得ないといけないなんて。
葛原:はい。
夫婦の一方だけが縁組をする場合、原則として、他方の同意を得なければなりません(796条)。
亀吉:そりゃあ、そうじゃよ。夫婦じゃもん、勝手なことは許さんよ。
葛原:夫婦一方の縁組によって法律上の地位に影響を受ける他方の配偶者の利益を保護する必要があるからです。
卓也:私の妻は賛成していますから大丈夫です。
葛原:そうしたら、後は亀吉さんの同意が必要ですね。
とりわけ子がいない夫婦の一方が養子縁組する場合、他方の配偶者が相続する財産が減少するという問題が生じますからね。
亀吉:わしゃ、ばあさんから相続する財産が減少するから縁組に反対だなんて、ケチなこと考えとらんよ。
ばあさんが、若い男に夢中になるのが悔しくてねぇ。
トメ:お、おじいさん・・・!
まさか、そんな風に思っていたなんて。
亀吉:それぐらい、言わなくてもわかるじゃろうて。
お前には、わしより1日でも長生きして欲しいんじゃ。
トメ:おじいさん、わかりましたよ。
亀吉:おぉ、そうか。わかってくれたか。
トメ:ええ。私の方が長生きすれば、あなたが私を相続することもなく、相続財産の減少を考える必要はありませんね。
それでは、心おきなく養子縁組させていただきます。いいですね。
亀吉:あぁ、もうわしゃ知らん!
わしが死んでから勝手にやってくれ。
(配偶者のある者の縁組)
第796条 配偶者のある者が縁組をするには、その配偶者の同意を得なければならない。ただし、配偶者とともに縁組をする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。
(婚姻の規定の準用)
第799条 第738条及び第739条の規定は、縁組について準用する。
(婚姻の届出)
第739条 婚姻は、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
2 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。