民法なエブリディ 債務不履行(H28ー33肢2)
【登場人物】
おじいさん
おばあさん
鶴
【物語】
おじいさんに助けられた鶴は、美しい娘の姿になって老夫婦の家にやってくると「絶対に覗かないでください」といって機織をしていましたがー。
おばあさん:ひ、ひっ、ひゃーっ。鶴が機を織ってる!
鶴:あんなに覗かないでくださいと言ったのに、見てしまったのですね。
正体を見られた以上、もうこの家にはいられません。
お別れです。
鶴はそう言うと、織った錦を持って家を出て行こうとした。
おばあさん:あれっ?
錦を置いていってくれないのかい。
鶴:覗かないという約束を破ったじゃないですか。
錦を置いていくどころか、損害賠償を請求したいのですよ。
おばあさん:いえねぇ。じいさんが私にぶつかって、そのはずみで扉がちょいと開いただけだよ。
鶴:そんなコントじゃあるまいし。
おばあさん:おや、私の言うことを信用しないのかい。
わたしゃ、責められるようなことは一切していないよ。
鶴:それなら、そうだと立証してくださいな。
立証できたら錦をお渡しいたしましょう。
おばあさん:いや、そんな言いがかりとつけるあんたこそ、私がわざと扉を開けたって立証しておくれ。
【問題】
債務者が自己の債務を履行しない場合、その債務不履行につき帰責事由がないことを債務者の側において立証することができなければ、債務者は債務不履行責任を免れることができない。(H28ー33肢2)
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【正解】○
おじいさん:なんだか妙な話になってもうて。
債務を履行しないとか、なんのことやら。
講師:おじいさんとおばあさんは、鶴が機織りしているところを覗かないという約束があったのですよね。
おじいさん:あぁ、約束したよ。
講師:お二人は、覗かないという不作為の債務を負っていたのです。そして、覗いてしまったのですから、債務を履行しなかったということになりますね。
おばあさん:それにしても債務不履行責任が成立するには債務者に責めに帰すべき事由が必要じゃろ。
講師:それはそのとおりです。
でも、もともと債務は履行すべきものですから、債権者において、債務者に責めに帰すべき事由があったことを証明(立証)する必要はありません。
鶴:私は、おばあさんが覗いたのはわざとだったとか、過失があるとか立証しなくてよいのね。
講師:はい。
債務不履行責任については、責任を免れたい債務者において"責めに帰すべき事由がなかったこと"を立証すべきであるとされています。その方が公平ですしね。
おばあさん:仕方ない。
じいさんや、あんたが私にうっかりぶつかっただけだって証明しておくれ。
このままじゃ錦を持って行かれちまうからね。
おじいさん:やれやれすっかり欲に目がくらみよって。
可哀そうな鶴や。達者で里にお帰りなさい。
鶴:もうこんな昔話には付き合ってられないわ。
損害賠償をもらうまで帰らないから!
債務不履行による損害賠償)
第415条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。